先生、水を一杯下さい

 

「先生、水を一杯下さい」、これは会話の授業で、ロールプレイ練習をしていたとき、ある学生がレストランの従業員に扮した私に向かって出た一言である。私は一瞬驚いた。心の中では「なんていう奴だ。先生である私にそんな要求をするなんて。今学期彼を落としてやろう」と思った。

そう思った寸前、彼が言おうとする意味がすぐわかった。彼は中国語で男の店員を呼ぶときに使う「先生」をそのまま日本語に使ったのだ。彼は中国語の「先生」が日本語でも同じ意味を持つと勘違いし、そういう表現を使ってしまった。

日本語ではこういう時は「すみません」と一言で済むのだが、中国語ではそれよりまず「先生」或いは「小姐」と店のスタッフに声をかけるのが一般的だ。台湾では、アルバイトのお兄さんに「先生」は使うが、学校の先生には「老師」と呼ぶのが普通である。 

日本では先生と呼ばれる職業、例えば弁護士、教授、代議士、医者等は他の職業と比べ、社会的に地位が高く、その地位に合うだけの収入を稼いでいる。他人から「先生」と呼ばれるだけだある種のステータスを象徴する。

当然、近頃各大学では学期毎に学生が教師を評価するようになり、先生の地位も昔と比べれば相当下がっている。授業の準備などわれわれが費やした時間と大学で得た給料を照らし合わせて見れば、アルバイトの兄さんとそんなに差がないので、そう呼ばれてもしょうがないかもしれない。

 

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    蘇 柏亞 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()